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2024年12月19日木曜日

Crucial MX500に寄せて

 12月14日、米国Micronは独ComputerBaseの取材に対し、CrucialブランドのMX500 SATA SSDの生産終了を公表した。中身のマイナーチェンジ、サイレントで「おいしくなってリニューアル」を繰り返しながら7年間も売り続けたロングセラー商品であった。あやうくPCパーツ界のB-52になるかと思っていたが、そうでもなかった。その地位は未だKeplerを採用するGT710によって堅持されている。いや、進歩の激しいPC業界においては基本的に不名誉な称号だが。

2018年登場、世代としてはSamsung 860EVOなどと同期であり、筆者もかれこれ4台ほどのMX500を保有し、知人に譲ったりもしたものであるが、何といってもMX500の特徴といえばクールなアルミの外装、安定したパフォーマンス、そして低価格にあるだろう。



前述のとおり、「おいしくなってリニューアル」を繰り返しているためディテールにはそれなりの変遷があるものの、Silicon Motion製4チャネルコントローラとDRAM、Micron 3DTLCが一貫したコスパを下支えしていたのは言うまでもない。

現在市販されているマザーボードの大半はNVMeドライブを複数搭載でき、ドライブも廉価、DirectStorageでもNVMeが推奨されているなど、SATAが廃れるのは時代の潮流としてもはや仕方ないであろう。しかし、この撤退によってフラッグシップ級SATA SSDはSamsung 870EVOしかもう選択肢がない状況になってしまった。ちなみに870QVOはQLCかつディスコンである。
依然としてCrucialにはQLCや選別落ちNANDがごった煮でDRAMレスであるBXシリーズはあるものの、そういった廉価モデルを作るのはトランセンドやADATAといった台湾勢の得意仕事である。そんな代物を純正プライスで買うくらいであればMSI S270 SSDなどPHISON系のDRAMレス TLCドライブのほうが納得できる品質と価格、申し訳程度のパフォーマンスを提供してくれるだろう。

なお、ComputerBaseの取材に対し、Crucial担当者は「新製品の用意がある」と述べているがこれに関しても過度な期待は禁物である。SATAドライブであるかは述べられておらず、そもそもとして近年のSATA SSD市場は粗悪化が激しく、DRAMレスかつ2チャネルのPHISON S11T、SMI SM2259XT、Realtek RM1135、Maxio MAS1102といった格安ドライブが大勢を占めており、SK Hynixはしれっと生産終了、WD Blueすら先行してDRAMレスになっている。
もしSATAドライブの新製品が投入されるとしても、SMIやPHISONといった大手コントローラメーカーのカタログにDRAM対応で4TBをサポートするコントローラがほぼないため、ハイパフォーマンスモデルが復活する望みは低いだろう。(一応、BX500との棲み分けで可能性がないわけではないとは述べておく。)

最後に「おいしくなってリニューアル」の内訳を洗いざらい酷評しておく
・そもそもリビジョン変更がサイレントで型番から判別できない
・パッケージが上の画像のような高級感ある厚紙からペラペラの箱に
・当初はキャッシュ切れでも速度を維持していたものが明らかに低速化
・キャッシュDRAM容量も削減された(?)
・ICがSM2258HからSM2259Hに(メモリ世代が変わった以上、仕方ない)
・サーマルパッドがグリスちょびっとになり、熱対策がしょぼくなった
・基板が小さくなった(もう少し早い段階で4TBモデルを出せたのではないか?)
・一部外国ではQLCロットが混在したとの噂

先述の通り、基本設計としてSamsung 860EVOと同期であり、サイレントリニューアルも相まって近年のSATAドライブとしては一歩パフォーマンスが劣る場面が否めなかった。特にボトルネックであるはずの読み込み性能に関して、870QVOに劣っている体たらくであったことは記憶に新しく、今からすれば先が長くないことを物語っていたのかもしれない。合掌。