このブログを検索

2019年10月22日火曜日

血迷ってADATA SU630をレビュー!

ADATA SU630

どうもこんにちは。ルートマンです。
つい先日ですが、NTT-XストアのセールでADATAのSU630 SSDの960GBモデルが安かったのを見かけ、QLCには否定的だったのに血迷って買ってしまいました。買っちゃったんだから仕方がない。今回はこれをいじり倒していこうと思います。

特徴

ADATA SU630はまだ珍しい3D QLC-NAND(4bit-MLC)を採用したSSDです。そのため、圧倒的にお手軽価格で入手可能であるものの耐久性やスピードに関してはTLC、MLCタイプには劣ってしまいます。なお、この欠点に関しては内部にSLCキャッシュ領域を持たせることである程度緩和させています。
ちなみに在庫一掃だったらしく、お値段は960GBなのに7980円(d払いだったので+1000ポイント還元)でした。安っ!!!

※フラッシュメモリーに保存するデータはSLCで1bit、MLCで2bit、TLCでは3bit、QLCで4bitであり、またそのデータはQLCでは2^4、16段階の電圧を印加して記録されます。そのため、大容量を簡単に実現できるものの書き込む場合にシビアな電圧制御と書き込んだデータのチェックが必要になるほか、保持された電子が少しでも漏れてしまうとデータが化けてしまうため、LDPC符号などを用いたパリティ検査などより屈強なエラー訂正が必要となります。そのため書き込み処理に時間がかなりかかります。もちろん、エラー訂正にも限界はありますので製品としての寿命もTLCやMLCに比べると短くなります。

外観

さぁNTT-Xからの荷物を開けてご対面~♪



…えーっとなんだこのパッケージ。ADATAのSSDは、バルク品とNVMe(レビュー保留中)しか買ったことないので他はどんなパッケージか知らないのですが、SanDiskやSamsungとは異なりブリスターパッケージに入っていました。台湾製になっています。
パッケージ表面には960GBと3D QLCのロゴ、裏面には申し訳程度の各国語での説明、ソフトのリンクつきQRコード、2年保証とありますね。色々とコストカット感MAXであります。現行品では3年保証に伸ばしてくれたみたいです。



本体はこんな感じ。筐体は一般的な7mm厚の2.5インチSSD、表面はプラスチックで、裏面はアルミらしき柔らかい金属で構成されています。PHISONリファレンスっぽいCFDやグリーンハウスのSSDは背面もプラだったので、ここは好印象かも。あと960GBとか1TBモデルってずっしり来るものが多いんですがこの製品は妙に軽い。この理由は後で判明しました。

負荷テスト

さて本題。QLC SSDということで苦手であろう連続負荷をかけてみました。ところが用意した150GBほどの動画データはすんなり書き込めてしまいました。一方で240GBモデルや480GBモデルの評判は速度低下しやすいとの口コミで、「オーバーヒートによるサーマルスロットリングではないか」との意見も散見されます。サーマルスロットリングの場合は読み込み速度が主に低下しますので、個人的にはこれはSLCキャッシュを使い果たした結果によるQLC変換・書き込み待ちとにらんでいます。
SLCキャッシュが不足すると、特にQLCタイプでは書き込み速度が20MB/sほどまで落ちこんでしまいます。これは前述の変換処理をするための仕様でどうしようもありません。安いSSDを買ったゆえの宿命ですので、どうしてもイヤな場合はおとなしく3D TLCの870 EVOやWD Blue、MX500を買いなおしてください。


さて、SU630ですが困ったことに発熱も多く、データアクセスするとすぐにコントローラが60度近くまで発熱してしまいます。過去に買った格安SSDですらあまり見受けられなかった事態で、黎明期のTLC SSDすらもう少し低い温度で推移することが多かったと思います。(ちゃんと温度センサーついてるあたりマシだとも言えますが)

CrystalDiskMarkでのベンチ結果です。全般的にランダムアクセスが遅いので、DRAMキャッシュもなさそうですね。 (そういえばADATAの紹介ページにもDRAMキャッシュ搭載とは書かれていない) ベンチ完走後に本体を触るとほんのり温かさを感じました。


一般的なSATA SSDに比べると少し遅めですが、体感にさほど悪影響はないでしょう。前述の発熱が心配ですので、メインPCのCドライブにはオススメできませんが、データドライブにするかボロPCをSSD化するにはよさそうです。

分解してチェック

事前にサーチしたところ、コントローラがMaxiotek(元JMicron)とSiliconMotionのロットの二種類が存在するようでした。また、ネジ隠しっぽいWarrantyシールがあるにも関わらずネジは不使用とのこと。これをふまえて解体していきます。
先述の通り本体はプラとアルミで出来ているため、開封作業に至る前でも押せば筐体に隙間ができちゃいます。なのでその隙間から筐体のツメをこじ開けていきます。

ポロッ

なんと基板が小さいがゆえにWarranty voidシールを破壊せずしてSSDの中身を取り出せてしまいました。(多分取り出した時点で保証外)筐体内部でロック用のでっぱり?みたいなのに引っかかる形で収まっていたようです。やはり徹底したコストカットがなされているようですね。
では基板を見ていきましょう。



このPCB基板は小さいですね!そしてこの子はSMIモデルだったようです。
SM2259XTコントローラ、NANDメモリはADATA刻印のもの(素性は不明、ADATAの採用傾向、QLC NANDの商品化例からしてIntel/Micron系の自封片?)が4枚搭載されています。DRAMバッファはなし。裏面には型番とシリアルナンバーのシールが貼ってあります。
基板のシルクには「SU650」と別のADATA製TLC SSDの型番が記されており、基板を使いまわしているようです。SU650のSSDコントローラのファームウェアとNANDメモリをQLC化したものがSU630なのでしょう。
また、高級SSDではよくSSDコントローラに熱伝導シートが貼ってありますがこれには貼ってありませんでした。QLCでは前述の通り書き込み処理が複雑ですし、コントローラ自身も小さいので、データアクセス時の発熱が余計にひどいのでしょう。 

総評

徹底的なコストカットにより格安で手に入るにも関わらず、大容量モデルなら意外と快適に使えてしまいました。しかし、大容量モデルだからといってクリエイティブ用途に最適かと聞かれれば、DRAMレスであることに加え、キャッシュ切れした後の大幅な低速化と発熱が多いのが気になるところです。
あくまでも性能も廉価SSDの域を出ることはないので、エアフローが整ったデスクトップパソコンにサブストレージ、ゲームインストール先としてや、古めのPCへのSSD換装程度といった用途が関の山ではないでしょうか。動画編集など、もう少し連続した負荷がかかる作業やもう少し信頼性を要する場合などは、WD Blue、Samsung EVO、Crucial MXなどの高級な3D TLCSSDを買いましょう。(あ、860ProとかMLCでもいいんですよ!)


2019/10/27 更新
2020/06/29 ちょっと訂正
2021/02/09 もうちょっと訂正